okinawaDM等高線から高精細DEM

琉球列島地形復元

はじめに

沖縄島では、国土地理院が公開している高精細標高データであるDEM5が、沖縄島中南部の北谷-沖縄市南部以南(2次メッシュ392735、392736位南)と大宜味村の一部しかない。沖縄県内では、沖縄島中南部(392735、392736位南)に続いて、石垣島と宮古島が公開されているが、沖縄島嘉手納-沖縄市以北がいまだに公開されていない。この地域で利用できるDEMとしては、1/25000地形図等高線から生成したDEM10しかない。

この状況は、『スーパー地形』(ダン杉本氏作成)で、沖縄島中部付近を表示させると確認しやすい。図中央の南側と北側では、地形の詳細表現に差があることがわかる。南側は国土地理院DEM5、北側はDEM10より生成された地形である。

スーパー地形沖縄島中部

沖縄島嘉手納-沖縄市以北でも、国土地理院からDEM5が、将来は公開されるかもしれないが、この地域には広範囲に米軍基地が存在している。もし、これが原因で未公開ということであれば、今後も公開されない可能性もある。
GIS沖縄研究室の『琉球列島地形復元プロジェクト』石垣島と宮古島では、1970年代の国土基本図(1/5000)の等高線を抽出して、5mグリッドDEMを生成している。このことから1/5000縮尺レベルの等高線があれば高解像度DEMは生成可能であることが判明してる。ただし、紙地図から等高線のデジタルトレースは時間を要する作業である。将来的には、AIでなどを使って、短時間で作業できるようになる可能性があるが、当方は老い先短いので、待っていられないが。

沖縄DM

国土地理院地形図をデジタル化したデータとしては、以前に整備された沖縄デジタルマップが存在する。沖縄デジタルマップ(沖縄DM)は、1/2500と1/5000精度の地形図から作成されたデジタルマップで、12年前に整備されたものです。その後、データ利活用を進めるため、GIS学会関係者などに配布された。このデータはGIS沖縄研究室でも所蔵しており、利活用の一つとして、高精度DEMの生成ができないか研究することとした。

沖縄DMは、1/2500と1/5000精度の地形図をトレースすることで生成された地形図で、それぞれ2mと5mの等高線(主曲線)が描かれている。本研究では、この等高線を利用することで、国土地理院DEM5に匹敵する精度のDEMが生成できないか検討する。

等高線抽出と海岸線設定

試験データとして、名護市範囲の沖縄DMのshp形式ファイルを選んだ。同データの属性フィールド『高度』に標高値が入力されているラインオブジェクトを抽出、さらに海岸線に当たるラインを標高0m等高線として選択した。これらを等高線shpファイルとして保存した。図『ベクトル等高線』中の等高線密度が高い範囲は、1/2500地形図をトレースした範囲で、等高線は2m間隔となっている。これ以外は1/5000地形図からなり、等高線間隔は5m間隔である。

ベクトル等高線

DEM生成

ベクトル等高線からGISソフトTNTmipsを使って5mグリッド標高データ(DEM5)を生成した(図『沖縄DM等高線から生成したDEM5』)。このDEMデータと比較するため、国土地理院DEM10(10mグリッド標高)を同範囲ダウンロードした(図『国土地理院DEM10』)。国土地理院DEM10は、1/25000地形図の10m等高線からベクトル等高線を起こし、そこから生成した10mグリッド標高である。DEM10は国土地理院DEM5が存在しない地域では重要な高精度のDEMデータである。今回生成したDEM5は山地の広い範囲で5m等高線から生成したグリッド標高データなので、10m等高線から生成したDEM10データと比較すると、山地の谷地形がより鮮明に見えているのがわかる。

沖縄DM等高線から生成したDEM5
国土地理院DEM10

山地の地形に関しては、DEM10を上回る地形解像度があることが判明した。

サイクリック彩色図による比較

標高0~50m区間内をレインボーカラーで彩色し、さらに、50~100m区間を同様に彩色、これを50m間隔で繰り返すレインボーカラーサイクリック彩色図でDEMデータを彩色、地形情報の精度を比較する。(DEM5彩色図、国土地理院DEM10彩色図)
『山地』の地形に関しては、DEM5がDEM10を上回る地形解像度があることが再度確認できるが、DEM10でも地形解像度は高い。

DEM5彩色図
国土地理院DEM10彩色図

一方、『低地』、『台地・丘陵』に関しては、DEM10の地形解像度は大きく低下する。

『低地』では、両DEM間に最も精度の差がみられた。DEM5では、低地内を流下する河川流路が明瞭に表現されている(DEM5彩色図左下と右上)が、DEM10では完全につぶれている(国土地理院DEM10彩色図の同位置)。また、低地内の微地形もDEM5ではある程度表現できているが、DEM10では平均化された緩傾斜面と処理されていて、微地形は全く再現できていない。
1/25000地形図では主曲線が10m、一部5m等高線が記述されている場合もあるが、起伏が少ない低地では等高線を使った地形表現ができないことから、DEM化しても同様であると考えられる。
また、『台地・丘陵』地帯でも、DEM5はDEM10を比較して、地形が明瞭に表現されている。細かな尾根筋や谷筋、地形的な高まりの形状などの地形表現されている。『台地・丘陵』地帯でも、1/25000地形図の10m主曲線では詳細な地形を表現しきれないものと考えられる。

沖縄DMの等高線データから作成したDEM5は、特に低地や台地丘陵で高精度のDEMが生成できる。

低地、台地丘陵のDEM

沖縄DM等高線データから作成したDEM5について、名護市中心市街地周辺の低地や台地丘陵のDEM5の地形復元精度を検討する。(名護市中心市街地周辺DEM5彩色図)

名護市中心市街地周辺DEM5彩色図

沖縄DM等高線は、低地部分では、土地境界部分のブロック擁壁のの構造物や、道路、建物などによって、等高線は途切れていることが多い。さらに、台地丘陵部では、地図記号『崖』で表されている部分で等高線が省略されている。(沖縄DM等高線)等高線の不連続が原因で、DEMによる地形情報が不鮮明になっている。

沖縄DM等高線

沖縄DMには、標高点ポイント情報も整備されている(沖縄DEM標高ポイント情報)。等高線データと標高ポイントデータ両者を利用しDEM生成を行った。等高線だけを利用したDEMと等高線データと標高ポイントデータを利用しDEMの差分を計算したものが『標高ポイント追加DEMとの差分』である。標高点ポイント地点周辺が局所的に影響を受けている状態で、等高線の断線・不連続などのためのDEM地形の不鮮明化を補えるものとはなっていない。
従って、DEMデータの地形精度を高めるためには、等高線の断線・不連続を解消する必要がある。具体的には地形状況や地形図の情報を利用して、できるだけ等高線を連続させる作業を行う必要がある。

沖縄DEM標高ポイント情報
標高ポイント追加DEMとの差分

等高線連続化

GISソフトを使って、地形状況や地形図の情報から等高線を連続させる作業を行った。(線修正加筆)

等高線修正加筆

上記加筆等高線から生成した5mグリッドDEMは下記の通りである。丘陵地帯に分布する農地改良が進んだ地域や低地の地形復元が良好になった。

加筆等高線DEM5

まとめ

沖縄DMのベクトル等高線を利用することで、5mグリッド標高データを生成可能であることが判明した。沖縄県内の国土地理院DEM5が利用できない地域において、詳細DEMデータを生成きることが分かった。また、農地整備や市街地化により土地改変が進んだ地域では、このベクトル等高線が不連続になっている地域も見られたが、地形状況や地形図情報から等高線を連続させる作業を追加することで、土地改変状況を反映したDEMを生成できた。
今後、同手法によるDEMの生成は、国土地理院DEM5の補間データとしての利用が考えられる。

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